[看護師監修]低身長が気になったら
子どもは日に日に成長し、身長は1年間に何センチも伸びますよね。お子さんの身長などは健診や幼稚園、保育所、学校などで定期的に測る機会があると思いますが、なんだか身長がまわりのお友達と比べて低いかも…あまり伸びていない気がする…など気になる時はありませんか。低身長の基準や病気などによる原因についてまとめます。
低身長とは
身長や発育は個人差が大きく、ゆっくり少しずつ伸びるタイプの子や、早く身長が伸び、その後はあまり伸びないなど様々です。そのため、何センチ以下が低身長などとは決められません。
では、何をもって低身長とするのでしょうか。まず身長について気になった時には、成長曲線を描いてみましょう。0〜6歳くらいまでの成長曲線は母子手帳に、それ以降はインターネットで調べると印刷できるホームページが多数あります。成長曲線とは男女別に、たくさんの子どもの身長や体重の記録を集め、年齢別に身長や体重の平均値や標準偏差を曲線で表したものです。約95%の子どもが-2.0SDから+2.0SDの間に含まれ、-2.0SD以下の子どもが低身長となります。100人中2〜3人程の割合です。
また身長は-2.0SD以上であっても、伸びが悪い場合も医師に相談してみましょう。
反対に、身長が伸びすぎる場合にも思春期早発症などの可能性があります。
低身長の原因
原因の多くは、ご両親も背が低いなどの遺伝や体質などが大半ですが、成長ホルモンなど身長を伸ばすホルモンの異常や染色体、骨の病気などで身長が伸びない場合もあります。また小さく生まれて、あまり身長が伸びない場合もあります。早めに適切な治療を受けることで身長が伸びます。
①成長ホルモンや甲状腺ホルモンの病気…成長ホルモン分泌不全低身長症、甲状腺機能低下症など
出産時の仮死状態や、事故などによる脳の外傷、脳腫瘍などで脳の下垂体が障害を受け、成長ホルモンが分泌されなくなり、身長が伸びず低身長となります。軽度の成長ホルモン分泌不全の場合には、はっきりした原因がなくても身長の伸びが悪くなることがあります。これらの病気が原因の場合は、不足している成長ホルモンや甲状腺ホルモンを補充する治療で身長が伸びます。
②染色体の病気…ターナー症候群、プラダー・ウィリー症候群など
ターナー症候群は2000人に1人くらいの割合でみられ、女の子に2本あるX染色体が1本しか無かったり、一部が欠損していたりします。バランスの取れた低身長ですが、卵巣の発育が悪いので思春期がみられず、心臓病や難聴などの合併症も起きたりします。成長ホルモン治療や女性ホルモン治療を行います。
プラダー・ウィリー症候群は、15番染色体の変異による病気で10000人に1人程の割合です。低身長の他に性腺の発育も悪く、乳幼児期には筋緊張の低下があり、肥満や発達障害などの症状もみられます。成長ホルモンの治療にて、身長だけでなく筋力や代謝にも改善がみられます。
③子宮内発育不全…SGA低身長症(「Small‐for‐Gestational Age」の略)
正期産で産まれても、身長や体重が小さい子どもや、 早産で妊娠週数に比べて小さく産まれた子どもは子宮内発育不全といいます。子宮内発育不全で産まれた子どもは、3歳頃までに身長は伸びますが、その後の身長の伸びが悪く、医師の診察により一定の条件を満たすと成長ホルモン治療を行うことがあります。
④骨や軟骨の病気…軟骨異栄養症など
骨や軟骨そのものの異常のために身長が伸びず、胴体に比べて手足が短いなど特徴的な体のバランスがみられます。遺伝する病気ですが、突然変異でご家族にこの病気の人がいなくても、子どもだけにみられることもあります。軟骨異栄養症では成長ホルモン治療や、整形外科で骨延長術を行います。
⑤心臓・肝臓・腎臓など臓器の異常
心臓・肝臓・消化器など、重要な臓器に異常がある場合、身体に十分な栄養を取り込むことができず、身長の伸びが悪くなります。臓器に異常を起こしている原因を取り除くことで身長は伸びます。また小児慢性腎不全でも低身長となりますが、標準身長の-2.5SDを下回る場合には成長ホルモン治療を行います。
⑥上記以外
遺伝や体質、身長を伸ばすホルモン、栄養などのほかにも、睡眠や運動、心理状態(ストレス)などの環境要因があります。
身長はよく伸びる時期とそうでない時期があり、男の子は声変わり、女の子は月経が始まると身長の伸びがわずかになる傾向があります。お子さんの身長が気になったら、身長を記入した成長曲線を持って、早めに医師に相談しに行きましょう。低身長の可能性がある場合、適切な検査を行い、原因に合う治療を行うことができます。治療が必要な場合、早めに始めた方が効果的です。