【看護師監修】言葉の遅れが気になったら
幼い子どもが言葉を話しているのを見ると、可愛らしいですよね。ですが、なんだかまわりの子に比べて、言葉の発達が遅いかも…と思うことはありませんか。言葉は個人差が大きいものですが、原因によっては治療や支援が必要な場合もあります。今回は様子をみても大丈夫と思われる場合と、治療や支援が必要な場合についてまとめます。
言葉が遅れている目安
言葉の発達は個人差が大きい、と書きましたが「言葉の発達がゆっくりだな」と健診などで判断するタイミングがいくつかあります。まずは1歳半のタイミング。明確な単語が3つほど言えるかをみます。次に2歳のタイミング。2歳前半で絵を見て簡単なものの名前が言えるか、2語文が話せるかをみます。2歳後半では自分の名前や年齢が言えるか、3語文が話せるか、簡単な概念を理解しているかをみます。次は3歳のタイミング。簡単な質問に答えられるか、数を言ったり数えたりできるかをみます。
これらを目安として、達成できていない場合は「言葉の発達に遅れがある」とされます。しかし、1歳半から2歳後半で以下に記すような場合は個人差として言葉の発達がゆっくりなタイプという場合があります。少し様子を見ても大丈夫ではないでしょうか。
様子をみても大丈夫と思われる場合
以下のようなことができたり、様子が見られる場合は、少し様子をみても大丈夫だと思われます。
・大人の話を理解していて、言われたことができる…例えば「これをポイしてきて」などと言われてゴミを捨てに行けたり、「お父さんを起こしてきて」と言われて隣の部屋にいるお父さんを起こしにいけるなど。
・言葉以外の手段で自分の意思を伝えようとしている…大人を見ながら身振り手振りで、自分の欲しいものを伝えようとしたり、自分では上手にできなかったもの(折り紙やブロックなど)をもってきて続きをやってもらおうとするなど。
・大人と自発的に関わる…見つけて嬉しいもの(電車や車など)を見た時に相手を見たり声を発して物を指をさして、同じものを見てもらおうとしたり喜びを共有したがる、一人で置いていかれるのを嫌がるなど。
・大人との関わりを楽しむ…大人がやっている簡単な手遊びなどを自分でやろうとして、ある程度真似したり、じっと見て喜ぶ、絵本を読んだり「たかいたかい」をすると、もっとやってもらいたがるなど。
治療や支援が必要な場合
以下の場合は、検査や治療、支援が必要になります。
・聴力障害
「耳が聞こえない」「耳の聞こえが悪い」という状態です。高度の難聴の場合には、音に対する反応が悪かったり、呼んでも振り向かないなどの様子から比較的早い時期に気づかれますが、中等度以下の難聴や反応の良い子の場合、なかなか気づかれないこともあります。
・発達性言語障害
言葉の遅れ以外に発達上の問題や原因が見当たらず、周囲への関心やコミュニケーションの意思がしっかりとみられる場合が、これにあたります。言葉の理解は年齢相当であるけれど、話すことが遅れている表出性言語障害(運動型)と、言葉の理解が発達していないために話すことも発達してこない受容性言語障害(感覚型)があります。
・精神遅滞
知的な発達が全般に遅いことにより言葉の発達も遅れている場合は、これにあたります。言葉の遅れ以外に、理解が悪い、身の回りの習慣を身につけることができないなどの遅れがみられます。
・自閉性障害
対人関係やコミュニケーションなど社会性の発達が困難な障害です。対人相互反応の質的な障害、意思伝達の著しい異常または発達の障害、活動と興味の範囲の著しい限局性という3つの特徴があります。また目が合わない、強いこだわりがある、同じ行為や行動に固執したり繰り返したりするなどの特徴もみられます。
上記のことを診断する場合には、いくつかの専門的検査を行います。まずは聴力検査と発達検査または知能検査を行います。これらの検査とお子さんの行動特徴を観察することにより、ほとんどの場合は診断が可能になります。
診断がついた後は、基礎疾患の有無を調べるために脳波、MRIまたはABR(聴性脳幹反応)といった検査を行う場合もあります。
言葉の発達が遅いと感じた場合には、お子さんの状態を正確に診断し、状態に合った治療や支援を行うためにも専門的な検査や、専門的な知識が必要です。そのため地域の保健センターへ相談したり、小児神経専門医のいる医療機関を受診しましょう。